中小企業生存率の正しいデータ。10年後に6.3%しか残っていないは嘘です

2012年のフジテレビのドラマで『リッチマン、プアウーマン』というのがありました。小栗旬と石原さとみが出演していた、スタートアップ企業を舞台にした作品です。

個人的に好きなドラマでたまに見返すのですが、最終回に少し気になるシーンがあります。

大手企業JIテックの宇田川昇社長(演:石坂浩二)が、主人公の日向徹(演:小栗旬)に企業生存率についてのアドバイスをするシーンです。

「30年後も生き残っている会社は99.98%と言われているから頑張れ」といった内容を、宇田川昇社長がアドバイスするシーンなのですが、それはないだろうと。

確かに現実世界でも「30年後の企業生存率が0.02%」という話をする人はいます。しかし、これは都市伝説なのです。

他にも「中小企業の生存率は、5年後が15%、10年後が6.3%、20年後が0.3%」などと言われたりもします。

私の顧客でもこの数字を信じて、不安になってしまっている中小企業経営者の方がときどきいます。

なので「日本の会社の99.7%を占める中小企業が、そんな割合で潰れていたら融資している銀行がもっと潰れていなければおかしいです」という話をして安心してもらっています。

それでも、いまいちピンとこない方もいるようですので、本当の中小企業の生存率について解説します。

中小企業の10年後の企業生存率は72%です

中小企業の企業生存率のグラフ

2016年の中小企業白書に、創業後経過年数ごとの企業生存率のグラフがあります。

帝国データバンクの「COSMOS2(企業概要ファイル)」を再編加工したものです。それによると、中小企業の企業生存率は以下の通りとなっています。

  • 3年後 91%
  • 5年後 85%
  • 10年後 72%
  • 20年後 55%
  • 30年後 43%

もっと新しいデータとしては、グラフはありませんが2023年版に「日本における起業5年の生存率は80.7%」という記載があります。

この数字を見ればわかる通り、中小企業の10年後の生存率が6.3%などということはないのです。

しかも、この数字は後継者不在だったり、「もう働かなくてもいいや」と思って廃業した企業も含まれていますから、資金繰りの悪化で潰れた会社だけで見れば、企業生存率はもっと高くなるはずです。

中小企業の生存率が6.3%とされた原因

私の地元も、中小企業や個人事業主が多く集まっているエリアなのですが、私が子供だった30年以上前からほとんどの会社が今でも残っています。

皆さんも、家の近所や、通勤経路の会社が潰れるのを見る機会は、少ないのではないでしょうか?

つまり、感覚的にも「企業生存率はそれなりに高い」というのは分かると思います。

では、どこから中小企業の生存率は6.3%という数字が出てきたのでしょうか?

日経ビジネスが嘘を書いているのか?

調べてみると、2017年の日経ビジネスの記事で「5年後が15%、10年後が6.3%、20年後が0.3%」というデータが紹介されています。ただし出典の明記がないため、どこから出てきた数字かは不明です。

まさか日経ビジネスが嘘を書いているのでしょうか?

そうではありません。実はこれベンチャー企業の生存率を示すデータなのです。

それでも、ちょっと低すぎるように見えますが、狭義の意味でのスタートアップだけの数字と考えると、おかしくはないかと思います。

本来の意味のスタートアップの数字としてならあり得る

日本だとスタートアップとベンチャーを同じ意味で使ったり、新規に立ち上げたビジネスは全てスタートアップと言ったりします。

しかし、本来のスタートアップというのは、革新的な技術などのイノベーションを武器に、短期間で一気に大企業を目指す企業だけを意味します。

なので飲食店や小売店、私のようなコンサルティング業は、新規に事業を始めてもスタートアップとは言わないのです。

狭義のスタートアップはVC(ベンチャーキャピタル)からの投資を受けていることがほとんどです。そして、その資金を開発やマーケティングに大量に使い、一気に市場シェアを奪いにいくのです。

そのようなハイリスクハイリターンな会社であれば、10年後の企業生存率が6.3%でもおかしくはないです。

「新規事業は千三つ(せんみつ)」という言い伝え

冒頭で紹介したドラマは2012年の放送です。なので日経ビジネスの記事よりは前のものです。

では、このドラマの「企業生存率0.02%」という数字はどこからきたのでしょうか?

これに関しては完全に個人的な主観ですが「新規事業は千三つ(せんみつ)」という言い伝えのようなものが由来ではないでしょうか?

要するに新規事業は1,000個に3つしか当たらないという話です。それでも0.3%ですからズレがありますが、この手の話が伝わっていく中で数字が変わっていったのかもしれません。

そもそも「千三つ」自体も根拠のない数字です。何をもってビジネスが当たったとするのか、その前提さえよく分かりません。

上場までいく確率でいえば、1,000社に1社というのは妥当な数字かもしれません。

日本国内の法人数は約400万社で、そのうちの上場企業は約4,000社ですから、1000社に1社です。

兎にも角にも、企業生存率に関して、なんとなくで語られている数字は嘘である可能性が高いので心配しすぎないことです。

リチプアで最も感動するシーン

ここまで散々、企業生存率が企業生存率が0.02%はずないだろう、という話をしてきたのですが、個人的には冒頭で紹介したシーンが『リッチマン、プアウーマン』で最も感動するシーンです。

実際の宇田川昇社長(演:石坂浩二)のセリフを引用すると次の通りです。

君は企業生存率というのを知ってるかね?

株式会社は30年でその99.98%が消える。つまり、100の会社が生まれても、30年後にはほぼ1社も残っていないということなんだ。

生き残るのは、奇跡に近い。

みんなギリギリの所をくぐり抜けて生き残ってきたんだ。その結果、国を代表する企業になったものもある。

30年後、ネクストイノベーションも残っているといいね。

それで思い出してほしいんだよ。

今のこの死ぬか生きるかの状況を「あれが分岐点だったな」って。

その頃の君は「あれも通過点の一つに過ぎなかった」と思うかもしれんがね。

期待してるよ日向徹。

奇跡を起こせ!

年を取るほどに、このシーンの良さが染みてきます。

若い起業家が潰れずに生き抜いてほしい、延いてはこの国の経済を引っ張っていく大きな存在になってほしいという、親心と期待が混ざった気持ちが見えて泣けます。

なので経営者のみなさんは、ぜひ『リッチマン、プアウーマン』を見てください。

参考文献
  • 中小企業庁. (2016).中小企業白書
  • 日経ビジネス. (2017).「創業20年後の生存率0.3%」を乗り越えるには
  • 株式会社フジテレビジョン. (2012).『リッチマン、プアウーマン』