経営者になる人の特徴。18歳時点でこの能力があるかで分かる

日経新聞に「私の履歴書」という70年近く続く名物コラムがあります。経営者などが1ヵ月交代で、自らの半生を綴るものです。

これを読んでいると、経営者になるような人は幼少期や学生時代から突出した才能を発揮していることが多いように見えます。大物の片鱗が見えているとでも言いますか、凡人とは違う何かを持っているのです。

実は研究でも、18歳時点の能力と、経営者になるかどうかには相関があることが分かっています。

経営者になった2万6,000人は何が違うのか?

経営者になる人は何か特別な才能を持っているのかを調べた、経済学者ルネ・アダムス博士らの研究があります。

この研究では18歳時点での能力が、その後に経営者になる確率と相関しているかを調べています。

対象となったのは130万人で、そのうち2万6,000人がCEO(最高経営責任者)となっていました。

18歳時点で見られる3つの特徴

この研究で注目しているのは、18歳時点での認知能力、非認知能力、身長の3つの特徴です。それぞれを簡単に説明します。

1. 認知能力

論理的に考える力、言葉を理解する力、図形や空間を把握する力、技術的な仕組みを理解する力などを含む能力です。事業環境の変化を読み取り、複雑な情報を整理し、限られた時間の中で判断するという経営能力と相関があると考えられます。

2. 非認知能力

責任感、粘り強さ、情緒の安定、社交性、主体性などです。これらの能力は、経営者に求められる強いプレッシャーの中で冷静さを保ち、人を巻き込み、最後までやり抜く力の土台となるものです。

3. 身長

そのまま背の高さです。実は過去の研究から身長の高さが、リーダーへの選ばれやすさや、交渉を有利に進められる可能性などと相関していることが分かっています。アメリカ大統領選挙でも身長が高い方の候補者が勝つ確率が高いというデータがあります。

全てがCEOになる可能性と相関

データ分析の結果、18歳時点での上記3つの特徴は、全てCEOになる可能性と相関がありました。

CEOとなった2万6,000人の中央値(※1)が、130万人のうちのどこに位置するかは以下の通りです。

  • 認知能力:上から17%
  • 非認知能力:上から8%
  • 身長:上から26%

単独での能力よりも、組み合わされるとより相関が強くなります。

認知能力・非認知能力・身長を、CEOになりやすさに応じて重みづけした総合スコアで見ると、中央値は上から5%の位置となります。

つまり、これらの能力を全て備えている人は、特に経営者になりやすいということです。

※1【中央値】
真ん中の順位の人の値です。仮にCEOが2万6,001人いるとしたら、1万3,001位の人の値です。認知能力でいえば、この1万3,001位の人は、全体(130万人)の中では上から17%の位置にいるということです。

なぜ3つの特徴があると経営者になりやすいのか?

なぜ、これら3つの能力が高いと経営者になりやすいのでしょうか?

それぞれの理由は以下の通りです。

1. 認知能力が相関する理由

経営者は市場の変化、競合の動き、組織、リスクなどを見ながら、会社の進む方向を決めなければなりません。

そのため、物事を整理して考える力や、数字・資料を読み解く力が高い人ほど、経営者になりやすいと考えられます。

また、サラリーマン経営者の場合、認知能力が高い人は、学歴や専門的な経験を得る機会が多く、若い頃から将来の幹部候補と見られやすい可能性もあります。

2. 非認知能力が相関する理由

今回の研究で、経営者になる可能性と最も強く相関していたのが非認知能力でした。

経営者には頭のよさだけでなく、人をまとめる力や、責任を引き受ける姿勢が必要です。正解がはっきりしない状況でも決断し、反対意見を調整し、困難な場面でも前に進める力が求められます。

そのため、粘り強さ、情緒の安定、社交性、主体性といった特徴を持つ人は、周囲から「この人なら任せられる」と見られやすく、昇進や抜擢につながりやすいと考えられます。

3. 身長が相関する理由

身長が高いこと自体が、経営能力を高めるわけではありません。

ただ、身長が高い人は、場面によっては存在感がある、堂々としている、リーダーらしいと見られやすい可能性があります。そうした印象が、リーダーとして選ばれる過程に影響することは考えられます。

また、身長は子どもの頃の健康状態や栄養環境を反映することもあります。そうした育った環境が、教育やキャリアの機会に影響している可能性もあります。

経営者として成功するかには関係しない

この研究結果を見て「自分はどの特徴も持っていないけれど経営者になってしまった…」と心配する必要はありません。

今回の研究では、18歳時点でのこれらの能力は、どのように企業の舵取りを行うかという経営スタイルとは無関係なことも分かっています。

つまり、認知能力の高い人ほど、経営者として成功しやすいということではないのです。また、報酬金額にもそれほど影響しないことも分かっています。

あくまでも、認知能力・非認知能力・身長というのは、経営者のなりやすさに相関しているものであって、経営者になった後の事業の成功に相関するものではありません。(少なくともこの研究では)

それと今回の対象となったのは全員が男性です。なぜ女性が対象となっていないかというと、兵役時の検査データをもとにしたものだからです。男性のデータのほうが圧倒的に手に入れやすいということです。

同族企業の経営者では成立しない

余談ですが、この研究では、同族企業の経営者についても分析しています。

その結果、同族企業の経営者、とくに創業家から引き継いだ後継者は、非同族企業の経営者よりも、認知能力や非認知能力などの水準がやや低い傾向にありました。

これは、同族企業ではCEO候補が家族内に限られるケースが多いためです。労働市場から最適な人材を選ぶのではなく、限られた親族の中から後継者を選ぶ場合、能力面で多少の妥協が生じる可能性があります。

ただし、これは家族企業のCEOが劣っているという意味ではありません。同族企業の後継者には、幼い頃から事業に触れていること、取引先との関係を受け継いでいること、創業家としての信頼があることなど、別の強みもあります。

参考文献
  • R Adams, M Keloharju, S Knupfer. (2018).Are CEOs born leaders? Lessons from traits of a million individuals.