管理職になりたくない女性は9割。その理由と目指してもらうための施策

女性活躍推進の流れが進むなかでも、「管理職になりたくない」と考える女性は多いです。

企業側としては、能力のある女性がそれを発揮しない状況は、大きな損失です。

しかし、女性が管理職を望まない背景には、職場環境や将来への不安、ロールモデルの不足など、さまざまな理由があります。

女性に管理職を目指してもらうためには、「なぜ目指さないのか」を正しく理解し、安心して挑戦できる環境を整えることが大切です。

管理職(課長以上)になりたくない女性は9割

労働政策研究・研修機構の調査によると、昇進に対する希望には大きな男女格差があることが分かっています。

具体的には以下の通りです。

希望女性男性
役付きでなくてもよい68.9%25.7%
係長・主任19.7%13.9%
課長7.9%23.3%
部長1.9%20.5%
役員以上1.0%16.0%

この表から分かる通り、課長以上への昇進を希望している人を全て合計しても約1割しかいないのです。

逆にいえば、約9割の女性は管理職以上になりたくないと考えているということです。

ちなみに、この数字は従業員数300人以上の企業が対象となっており、300人未満ではさらに、管理職になりたくない女性の割合が高まることも分かっています。

女性が管理職になりたくない理由

この調査では、なぜ管理職になりたくないのかという理由も確認しています。

  • 仕事と家庭の両立が困難になる 40.0%
  • 責任が重くなる 30.4%
  • 自分には能力がない 26.0%
  • 周りに同性の管理職がいない 24.0%
  • 自分の雇用管理区分では昇進可能性がない 23.1%
  • メリットがないまたは低い 22.9%

ちなみに男性が昇進したくない理由として最も多く挙げたのは「メリットがないまたは低い(41.2%)」でした。

そして、女性が最も多く挙げた「仕事と家庭の両立が困難になる」を、昇進したくない理由に挙げた男性は17.4%でした。

女性に管理職を目指してもらうための施策

家庭との両立が女性の昇進意欲を妨げていることは、多くの企業が認識しており、すでに対策をしている場合もあるかもしれません。

しかし、それでも管理職になりたくない女性が多いのは、やはり心理的な抵抗によるものが大きいといえます。

責任の大きさや、自分の能力への不安、周囲からの目など、女性が昇進する際に気にしてしまうことは数多くあります。

ではどのようにすれば、こうした心理的障壁を取り払い、女性にも管理職を目指してもらえるようになるのでしょうか?

1. ジェンダーバイアスを徹底的に潰す

まず、重要なことは会社の空気を変えることです。

いまだにジェンダーバイアス(性別に対する固定観念や偏見)が残っている会社は多いです。

男女ともに、女性は家庭を優先すべき、控え目でいるべき、といった無意識の偏見を持っているのです。

このような空気が残っている会社では、管理職に興味を持っている女性でも「出世すると僻まれる、協力してもらえない」と感じ、行動できません。

こうした空気を変えるには、経営者や管理職がそういった芽を潰していくことが重要です。

どんな些細な差別発言でも許さないという態度を示し、偏見を持つことがいかに恥ずかしいことかを根気よく伝えていくことが必要です。

2. ロールモデルとの接触機会を増やす

先ほどの調査では、管理職になりたくない理由として、24%の女性が「周りに同性の管理職がいない」ということを挙げていました。男性でこの理由を挙げたのは0.3%でした。

女性の場合、周りにお手本となるロールモデルがいないため、自分が管理職になった姿を想像しにくいという問題もあります。

そこで、部署間に関係なく交流できる機会や、メンター制度などを活用することで、直接的に女性管理職と接する機会を増やすことが有効となります。

コンスタンツ大学のザビーネ・ベルナー教授らの研究でも、同性ロールモデルの存在が、リーダーシップに対するモチベーションを高めることが分かっています。

ロールモデルは自分を重ねやすい相手ほど、効果が強くなります。

3. 有名な女性リーダーを活用する

社内にロールモデルとなりそうな女性管理職がいないこともあります。

そのようなときは、有名な女性リーダーを活用すれば良いのです。

クイーンズ大学のイオアナ・ラトゥ教示らの実験では、ヒラリー・クリントンのような有名なリーダーの写真を見せられた女性は、リーダーシップ課題でより力強い行動や高いパフォーマンスを発揮することが分かっています。

だからといって、社内にポスターを貼れということではありません。(それも有りかもしれませんが…)

たとえば、あなたが経営者だったとして、「リーダーシップを学ぶためにマーガレット・サッチャー元英首相の本を読んでいる」といったことを発言すれば良いのです。

リーダーというのは必ずしも男性ではないのだ、という空気を醸成することができます。

4. オプトアウト方式を採用する

管理職に興味はあるけれど、迷っていたり、踏み出せないという女性もいます。

そのような女性に有効なのが、オプトアウト方式です。

これは、昇進したい人に立候補させるのではなく、昇進条件を満たす人は全員が昇進試験を受けるという方式です。そして、昇進したくない人だけがその意思表示をするのです。

簡単にいうと、健康診断を受けるのと同じ方式です。

人間というのは初期設定とされているものを、そのまま受け入れる性質を持っていますから、立候補方式よりも有効です。

UCLAのジョイス・ヒー博士らの実験でも、このオプトアウト方式が、男女の昇進意欲の差を埋めることに役立つことが示されています。

それでも管理職になりたくないという女性の意思を変えるのは難しいですが、迷っているけれど立候補できないという女性を取りこぼすリスクは減らせます。

「まず取締役会に女性役員を増やそう」は危険な考え方

女性管理職を増やすために、まずは取締役会に女性を入れようと考える経営者もいるかもしれません。

確かに、女性役員が増えると、その下の管理職も増えるという「人事のトリクルダウン効果」が発生することは、複数の調査で判明しています。

しかし、この効果はその企業の「女性管理職が活躍できるレベル」までしか起こりません。

つまり、その企業の女性管理職が活躍できる環境がどれくらい整っているかが重要であり、そのキャパシティまでしか増えないのです。

面白いデータがあります。

エクセター大学ビジネス・スクールのアーロン・ペイジ博士らが、英国企業の女性取締役と女性管理職の比率について調査したものです。

この調査では「女性取締役が増えると、それに伴って女性管理職も増える」という相関関係が分かりました。

しかし、ある時を境にこの相関関係が大幅に弱まったのです。

それはいつかというと、2011年です。

この年、イギリスではロンドン証券取引所の代表的な指数「FTSE 350」を構成する企業に対し、取締役会の女性比率を25%以上にするよう勧告が出されたのです。

これにより、女性取締役が急激に増えたため、相関が弱まったのです。

つまり、自社の「女性管理職が活躍できるレベル」を超えて女性取締役のみを増やしても、それより下の管理職は増えないのです。

それどころか、取締役となった女性が社内のやっかみによって、邪魔されるなどの悪影響のほうが大きくなります。

表面的な人数を増やすよりも、まず女性管理職が活躍できる社内環境を整えることが重要なのです。

参考文献
  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」結果
  • S. Boerner, M. Schwarzmaier, I. Tagos. (2025).Female motivation to lead: the impact of same-sex role models and female leadership strength awareness
  • I.M. Latu, M.S. Mast, et al. (2019).Empowering Mimicry: Female Leader Role Models Empower Women in Leadership Tasks Through Body Posture Mimicry
  • J.C. He, S.K. Kang, N. Lacetera, (2021).Opt-out choice framing attenuates gender differences in the decision to compete in the laboratory and in the field
  • A. Page, R. Sealy, et al. (2024).
  • J.C. He, S.K. Kang, N. Lacetera, (2021).Opt-out choice framing attenuates gender differences in the decision to compete in the laboratory and in the field