支払いが滞る会社を切るべき脳科学的な理由

支払いが滞る取引先を抱えていると、仕入代金、人件費、外注費、家賃、税金などの支払いに影響が出ます。

自社は約束通りに支払いをしなければならない中で、取引先からの入金が遅れれば資金繰りに歪みが生じます。

特に中小企業にとって、未回収債権の増加は大きな負担です。利益が出ているように見えても、現金が不足すれば黒字倒産の可能性もあります。

資金繰りの問題だけではありません。入金確認、督促連絡、再請求、社内共有、場合によっては弁護士や専門家への相談など、多くの対応コストが発生します。

本来であれば、新規顧客の開拓や既存顧客への提案、業務改善に使える時間を回収対応という生産性のない行為に費やさなければならなくなります。

そして何よりも大きなリスクは、経営者であるあなたの脳に悪影響を及ぼし、経営上の判断力を鈍らせることにあります。

お金の心配は、脳のワーキングメモリや注意を奪い、目の前の判断に使える思考の余白を減らすことが研究で分かっているのです。

お金の心配をすると脳がダメになる

経営者にとって重要な仕事の一つは、経営上のあらゆる判断を的確に行うことです。

しかし、支払いが滞る会社との付き合いによって、この判断力は低下します。

なぜなら「ちゃんと支払ってくれるのか?」「自社の支払いは間に合うのか?」というお金の心配は脳をダメにするからです。

農家は収穫後のほうが頭が良い

経済学者のアナンディ・マーニーらが面白い実験を行っています。

この実験では400人以上のサトウキビ農家に、脳の認知機能に関するテストを受けさせました。

テストはサトウキビの収穫前と収穫後の2回行ったのですが、収穫後のほうが成績が良かったのです。

なぜこのようなことが起こったのでしょうか?

それは収穫の前後で金銭的な余裕度が違うからです。

収穫前の農家は、質入れや借金が多く、日常的な支払いへの対処も難しい状態です。

そのため、意識していないときでも、その心配に脳のリソースが割かれ、テストに集中できずスコアが低くなってしまったということです。

収穫後はそれを売ったお金が入りますから、お金の心配に脳のリソースが割かれず、テストに集中できたのです。

脳のバックグラウンドで重いアプリが動いているようなもの

お金の心配は、それを考えていないときでも勝手に脳のリソースを消費するということです。

たとえるなら、スマホで重いアプリがバックグラウンドで動き続けているようなものです。

仮にあなたが高所得者であっても「自分は金持ちだから大丈夫」と思ってはいけません。

ポルトガルカトリック大学のフィリパ・アルメイダ博士らの分析によれば、お金持ちかどうかに関係なく、お金の心配をすると脳への負担が大きくなることが分かっています。

「あのお客さんちゃんと払うんだろうか?」と考えただけで、知らないうちに脳のリソースが大量消費されているということです。

経営者の個信が汚れている可能性が大きい

支払いが滞っていても、相手先の財務状況が悪くなければ心配しなくて良いと考えるかもしれません。

しかし、資金繰りが悪化していないのに、支払いが滞る会社もかなり危険です。

なぜなら、経営者がだらしない性格であることの証明だからです。

このタイプの経営者は会社での金融機関に対する支払いに滞りがなくとも、個人の支払いには滞りがあるということも珍しくありません。

実は、これがかなり危険なのです。なぜなら、代表者の個人信用情報(個信)が汚れていると、会社の資金繰りが悪化したときに、融資を受けられないからです。

個信とは、借金やクレジットカードの返済・支払い状況(支払遅延など)を記録したデータのことで、どの金融機関からでも閲覧が可能です。

みずほ銀行での借金は、三井住友銀行からでも確認できるということです。楽天カードの支払い遅延は三菱UFJ銀行からでも確認できます。個信は共有のデータベースのようなものだからです。

銀行は法人に融資するときでも、代表者個人の個信を見ます。そこで支払い遅延などがあれば貸してくれなかったり、減額されます。

つまり、経営者のだらしなさによって支払いが滞っている会社というのは、少し景気が悪化して、資金繰りに綻びが出ただけで、そのまま破産する可能性が高いということです。

支払いが遅れているのに罪悪感を持たない人の脳

ちなみにですが、支払いが遅れているにも関わらず、悪びれる様子がないならかなりの危険人物です。

その場では、申し訳なさそうな態度を見せても、次回に会ったときに何事もなかったかのように振舞ったり、「銀行が閉まってるから今日は無理」と意味不明な言い訳をする取引先がいないでしょうか?

こうした態度を取る人というのは「辞めさせた方がいい社員の特徴、ダークテトラッドという性格傾向」で紹介したように、サイコパスなどの特殊な脳を持っているタイプです。

人口の1~3%は存在していますから、決して珍しいものではありません。このタイプは生まれつき、脳内の罪悪感に関連する領域の反応が悪いのです。

ですから支払いが遅れても悪いこととは思っておらず、謝罪するのはそうすることで自分が有利になるという利己的な理由からです。

そしてこの特性は変わりようがありませんから、今後も同じことが起こる可能性が高いです。

このタイプの人間と接することも、脳の認知リソースを消耗させますから、早めに関係を切ることをおすすめします。

たった一度の支払遅延と軽く見てはいけない

支払い期日を守ることは、ビジネスにおける基本的な約束です。

もちろん、やむを得ない事情で一時的に支払いが遅れることはあります。その場合でも、誠実な会社であれば、事前に連絡し、理由を説明し、具体的な支払予定日を提示するはずです。

その約束を軽視する会社は、他の場面でもルールや契約を軽く見る可能性があります。

場合によっては非倫理的な行動や、違法行為を行っていることもあります。

たった一度の支払遅延と軽く見てはいけません。

参考文献
  • A Mani, S Mullainathan, et al. (2013).Poverty Impedes Cognitive Function.
  • F Almeida, I Scott, et al. (2024).Financial scarcity and cognitive performance: A meta-analysis.