「3代目が会社を潰す」は嘘だった!元ネタとなった調査では2代目が潰していた

「初代が作り、2代目で傾き、3代目で潰す」

中小企業や同族企業の経営を語る場面で、こうした言葉を耳にすることがあります。

「2代目で傾き」ではなく「2代目で伸ばし」と言われることもあります。

どちらにせよ、3代目は創業者の苦労も知らず、子供のころから恵まれた環境にいたから緩慢な経営で倒産させてしまうということです。

実際のところ、本当に3代目が会社を潰す確率は高いのでしょうか?

周りを見渡してみると、3代目社長のときに潰れている会社もあるかもしれません。

しかし、それは3代目の能力の問題ではなく、タイミングの問題なのです。

どんな斬新なビジネスモデルであっても、3代目が継ぐ頃になると、市場環境は変化し、そのビジネスモデルの寿命が近づくのです。

つまり3代目に引き継がれる時点で、会社がすでに難しい局面に入っているということです。

会社を潰すのは2代目だった

「3代目が会社を潰す」という迷信は日本以外にもあります。

英語圏では「The Three-Generations Myth(3世代神話)」という言葉があります。

イギリスには「From clogs to clogs is only three generations(3世代で木靴から木靴へ)」という諺もあります。

木靴を履くような貧しい身分から富豪になっても、孫の代ではまた木靴を履くような身分になってしまう、という意味です。

こういった神話だけではなく、実際のデータも存在します。

3代目まで残っていた企業は13%

同族経営の研究者として知られるケロッグ経営大学院のジョン・L・ワード教授がイリノイ州の製造業200社の生存率を調べたところ、以下のことが分かりました。

  • 2代目まで残っていた企業:30%
  • 3代目まで残っていた企業:13%
  • 4代目まで残っていた企業:3%

このデータは1987年に出版されたた『Keeping The Family Business Healthy(ファミリービジネスを健全に保つ)』という本に掲載されており、「3代目が会社を潰す」という話題のとき頻繁に言及されます。

70%の会社は2代目のときに潰れている

このデータからも分かる通り、3代目の頃には9割近くの会社が潰れてしまっているのです。

しかし、冷静に見ると、最も会社を潰しているのは2代目だということが分かります。

なぜなら、70%の会社は2代目のときに潰れているからです。

倒産した企業の平均寿命は23.5年、経営者の6割以上が20年未満で引退

これからは「2代目が会社を潰す」と言うべきですね、となりそうなところですが違います。

冒頭から説明している通り、これは因果関係ではなく、相関関係なのです。

身内に会社を継がせるから潰れるのではなく、子世代・孫世代が経営者になる頃には企業の寿命も近づいてるということなのです。

東京商工リサーチの調査によると、2025年に倒産した企業の平均寿命は23.5年とのことです。

そして、中小企業白書によると、外部資本の入っていないオーナー経営者の在任期間は以下の通りです。

  • 3年未満 9.6%
  • 5年未満 10.1%
  • 10年未満 17.7%
  • 20年未満 27.9%
  • 20年以上 34.7%

これは創業経営者に限定された数字ではありませんが、中小企業の経営者は6割以上が20年未満で引退しているということです。

倒産した企業の平均寿命の23.5年と重ねると、2代目に代わる頃が潰れる頃ということです。

同族経営の会社のほうが寿命が長い

データにもよりますが、同族経営の会社のほうが寿命が長いという研究もあります。

外野からとやかく言われないので、長期的な視点で経営をできる点などが有利に働くからです。

また、残酷な話をすれば人間の能力というのは、遺伝による部分も大きいです。

つまり2代目・3代目というのは起業に成功した人の遺伝子を引き継いでいるのですから、優秀である確率は高いのです。

有名なところではユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長は2代目ですし、トヨタ自動車の豊田章男会長は創業家の3代目です。

世界に目を向ければエスティーローダーの企業再編を主導した、ウィリアム・P・ローダー会長も3代目です。

「3代目が会社を潰す」という迷信のせいで、潰した経営者にばかり注目する確証バイアスが働き、見くびってしまいがちですが、視野を広げれば優秀な2代目3代目は多いのです。

成功する3代目に共通すること

地方の中小企業の中にも、2代目・3代目経営者によって大きく発展している企業が数多くあります。

そのような企業には、次のような共通する特徴があります。

承継を「守り」ではなく「成長の機会」と捉えている

企業を引き継ぐ場面では、どうしても「失敗してはいけない」「先代のやり方を崩してはいけない」という意識が強くなりがちです。もちろん、既存の取引先、従業員、地域との関係を守ることは大切です。

しかし、企業を発展させている後継者は、承継を会社を次の段階へ進める機会として捉えています。

たとえば、これまで属人的に行われていた業務を仕組み化したり、既存の商品やサービスを新しい顧客層に向けて展開したり、デジタル化によって生産性を高めたりしています。

承継は、会社の歴史を断ち切るものではありません。むしろ、これまで積み上げてきた信用や技術を土台にして、新しい成長の方向性を描くきっかけになります。

後継者が前向きな視点を持つことで、社内にも「これから会社を良くしていこう」という空気が生まれます。

財務諸表に表れない「知的資産」を引き継いでいる

企業の価値は、決算書に表れる数字だけでは測れません。

長年の取引で築いてきた信用、熟練社員の技術、顧客との関係、社内に蓄積されたノウハウ、地域での評判、ブランドへの信頼なども、会社にとって重要な資産です。

こうした目に見えにくい資産は「知的資産」と呼ばれます。

企業を発展させている後継者は、この知的資産の重要性を理解しています。先代がどのように顧客との信頼関係を築いてきたのか、現場にはどのような技術や工夫があるのか、会社らしさはどこにあるのかを丁寧に引き継いでいます。

特に中小企業では、強みが人や関係性に結びついていることが少なくありません。これらを十分に理解しないまま新しい施策を進めると、会社の良さを損なってしまう可能性があります。

新しい取組に挑戦できる組織風土をつくっている

会社を発展させるには、経営者一人の力だけでは不十分です。従業員が前向きに意見を出し、新しい取組に挑戦できる組織風土をつくることが欠かせません。

後継者が新しい方針を掲げても、社内に「どうせ変わらない」「失敗したら責められる」という空気があると、改革は進みにくくなります。

そのため、発展している企業の後継者は、従業員との対話を大切にしています。現場の声を聞き、改善提案を歓迎し、小さな挑戦を認めることで、社内に変化を受け入れる雰囲気をつくっています。

また、成功事例だけでなく、うまくいかなかった取組から学ぶ姿勢も重要です。挑戦を否定せず、次に活かす文化がある会社では、従業員が主体的に動きやすくなります。

先代の経営資源を受け継ぎながら、自分の経営テーマを持っている

企業を発展させている後継者は、先代が築いた経営資源を尊重しながら、自分自身の経営テーマを持っています。

たとえば、「地域に根ざした会社から、広域に展開できる会社へ」「職人技を守りながら、若手が育つ仕組みをつくる」「既存顧客を大切にしながら、新しい市場を開拓する」といった形です。

自分の経営テーマがあることで、判断の軸が明確になります。新規事業に取り組むべきか、人材投資を優先すべきか、設備投資を行うべきかといった判断も、テーマに照らして考えやすくなります。

先代から受け継いだ信用、顧客、技術、人材、企業文化は、後継者にとって大きな財産です。その財産を活かしながら、自分の時代に合った経営を進めている企業は持続的に発展しています。

自社の強み・弱みを客観的に見える化している

会社を発展させる後継者は、感覚や思い込みだけで経営判断をしません。自社の強みや弱みを客観的に把握し、見える化することを重視しています。

長年続いている企業ほど、「うちは昔からこのやり方でやってきた」「お客様は分かってくれている」といった暗黙の前提が多く存在します。こうした前提は、強みである一方、変化を妨げる要因にもなります。

そのため、後継者は売上構成、利益率、顧客層、商品別の収益性、業務フロー、人材の配置、取引先との関係などを整理し、会社の実態を数字や言葉で把握します。

自社の強みが明確になれば、伸ばすべき領域が見えてきます。反対に、弱みが分かれば、改善すべき課題に優先順位をつけることができます。

客観的な見える化は、後継者が自分らしい経営を始めるための出発点になります。

大切なのは「何代目か」ではない

「3代目が会社を潰す」という言葉は、後継者の資質を見ているようで、実は会社の寿命や事業環境の変化を見落としている言葉です。

会社が難しい局面に入ったとき、たまたま経営を担っているのが2代目や3代目であるにすぎません。

大切なのは、何代目かではなく、受け継いだものをどれだけ正しく理解し、時代に合わせて作り替えられるかです。

創業者が残した信用や技術は、守るだけでは徐々に古くなっていきます。しかし、それを次の成長の材料として使えれば、承継は衰退の始まりではなく、会社をもう一度強くする転機になります。

後継者がやるべきことは、先代の真似ではありません。受け継いだ信用や技術を大切にしながら、自分の代で会社をどう残していくかを考え抜くことです。

参考文献
  • John Ward. (1987).Keeping The Family Business Healthy
  • 東京商工リサーチ. (2025).倒産企業の「平均寿命」調査
  • 中小企業庁. (2018年)中小企業白書