経営者になってはいけない人の特徴!データで判明してます

経営者は、会社の意思決定、人材配置、組織文化、顧客との向き合い方に大きな影響を与える存在です。

だからこそ、「どんな人が経営者に向いているのか」だけでなく、どんな人が経営者に向いていないのかを考えることも大切です。

経営者になってはいけない人は、必ずしも能力が低い人ではありません。むしろ、行動力があったり、自信があったり、話がうまかったりして、一見するとリーダーに向いているように見えることもあります。

しかし、その人が「自分をよく見せること」を会社の成長より優先したり、失敗を認めなかったり、人を大切にしなかったりすると、組織は少しずつ悪い方向に進んでしまいます。

経営者の性格は、個人の問題だけでは済みません。トップの考え方は、会社の判断基準になり、やがて社内の空気や文化になります。つまり、向いていない人間が経営者になると、会社全体が大きなリスクを抱えることになるのです。

本記事では、リーダーシップや組織心理学の研究をもとに、経営者になってはいけない人の特徴をわかりやすく整理します。

経営者になってはいけない人の特徴

1. 過度な自己愛を持っている人

経営者に向かない典型的な特徴の一つが過度な自己愛です。

自分が注目されること、称賛されること、特別扱いされることを強く求める人は、会社のための意思決定と、自分を大きく見せるための意思決定を混同しやすくなります。

ペンシルバニア州立大学のアリジット・チャタジー博士らの研究では、ナルシシスティックな経営者は、大型買収などの注目を集める戦略を好み、その結果として大きな成功と大きな失敗の両方を生みやすいことが示されています。それらを均せば数字上のバランスが取れることもありますが、企業経営のスタイルとしてはあまりに危険です。

派手な決断をする経営者は、メディア露出、社内での崇拝、周囲からの称賛を求め、反対意見を「自分への攻撃」と受け止めやすい特徴があります。そして意見に対する冷静な検証よりも、自分のイメージを守ることに力を使うため正しい経営判断ができなくなります。

2. 誠実な性格の人

経営者には、誠実さや責任感が必要です。約束を守ること、数字をきちんと見ること、社員や顧客に誠実に向き合うことは、会社を経営するうえで欠かせません。

しかし、真面目すぎる性格は弱点となることがあります。

オーフス大学のトム・アーボ准教授らの研究によれば、誠実性と神経症傾向の高い経営者は戦略的柔軟性(環境が変わったときに会社の方針や動き方をうまく変えられる力)が低いことが分かっています。

ここでいう誠実性とは、責任感が強く、計画的で、きちんと物事を進めようとする性格です。本来はよい特徴です。しかし、行き過ぎると「計画通りに進めること」にこだわりすぎて、状況に合わせて変化できないことがあります。

また、神経症傾向とは、不安を感じやすかったり、感情が不安定になりやすかったりする傾向のことです。この傾向が強いとリスクを取る場面で必要以上に慎重になり、決断が遅れるのです。

もちろん、誠実であること自体が悪いわけではありません。問題は、誠実さが「一度決めたことを変えてはいけない」「予定通りに進まないことは失敗だ」という考え方が強いことです。

3. 自分の投資判断を過信する人

経営者は新規事業、設備投資、採用、M&Aなど将来を見据えた判断をし続けなければなりません。だからこそ大胆さだけでなく、自分の見立てが間違っている可能性を考える冷静さが必要です。

経済学者ウルリケ・マルメンディエの研究では、過信した経営者は投資機会を過大評価しやすく、社内に使える資金があるとき無駄に投資を拡大しやすいことが分かっています。また、外部環境が自社を過小評価していると考えやすく、資金が必要なときでも資金調達に消極的になることも示されています。

これらの特徴は会社の資金配分を歪めるリスクといえます。「自分なら成功させられる」「投資家や金融機関はわかっていない」と思い込みすぎると、反対意見や不利なデータを軽視しやすくなります。

経営者になってはいけないのはリスクを取る人ではありません。リスクを取っている自覚がない人です。自分の判断を過信し、検証や撤退を軽んじる人は、会社の資金を自分の勘に賭けてしまうのです。

4. ダークトライアド

経営者は、目標達成のために人を動かす立場にあります。しかし、人を動かすことと、人を道具として扱うことはまったく違います。

性格心理学の言葉で「ダークトライアド」というものがあります。これは以下の邪悪な三つの性格特性の総称です。

  • マキャベリアニズム:目的のために他者を操作する
  • ナルシシズム:自分の優越性や称賛を求める
  • サイコパシー:他者の痛みや損失に鈍感

こうした特徴を持つ人が経営者になると、社員、顧客、取引先を「自分の目的を達成するための手段」として扱いやすくなります。短期的には成果が出ることもあります。しかし、長期的には信頼が失われます。

人を大切にしない経営者のもとでは、優秀な人から離れていきます。残るのは、声を上げられない人、従うしかない人、諦めた人です。つまり企業が衰退に向かうということです。

ロングウッド大学の研究チームの分析でも、ダークトライアドの特徴を持つ人は、職場の生産性を落とすことが分かっています。

5. 権力を持つと共感を失う人

経営者になると周囲の態度は変わります。部下は反対意見を言いにくくなり、取引先は丁寧に接してくれます。社内では経営者の一言が大きな意味を持つようになります。

そのため、経営者本人が気づかないうちに、「自分は特別な存在だ」と感じてしまうことがあります。

ケロッグ経営大学院の研究チームの実験によると強い権力を意識した人は、相手の視点で物事を考えにくくなることが分かっています。

権力を持つこと自体が悪いわけではありません。経営者には会社を動かすための権限が必要です。問題はその権限によって、周囲の人の気持ちや事情が見えにくくなることです。

たとえば、現場が「人手が足りない」と言っているのに、「工夫が足りないだけだ」と決めつけてしまう。部下が悩んでいるのに、「甘えている」と片づけてしまう。顧客が不満を感じているのに、「こちらの方針が正しい」と聞く耳を持たない。

このような状態は数字や方針だけを見て、人の痛みや現場の実情を見落としているサインです。この状態が続くと独りよがりな経営判断をしやすくなります。

6. 謙虚さがない人

謙虚さは、経営者にとって弱さではありません。むしろ、経営者が学び続けるための重要な能力です。

シンガポール国立大学のエイミー・オウ博士らの研究では、謙虚な経営者のもとでは、他の幹部が協働し、情報を共有し、共通の目標に向かやすいことが示されています。

謙虚な経営者は、自分がすべてを知っているとは考えません。現場から学び、専門家に聞き、若手の意見にも耳を傾けます。それによって会社は学習する組織として市場の変化に柔軟に対応できるようになります。

逆に、謙虚さのない経営者は、周囲の知恵を使えません。

「自分の経験が一番正しい」「部下はわかっていない」「反対意見はやる気がない証拠だ」と考え、組織の学習能力を奪います。そして変化に対応できず淘汰されていくのです。

7. 恐怖で人を動かす人

「厳しい経営者」と「人を傷つける経営者」は違います。厳しさには基準を示し、成長を促す側面があります。それに対し、恐怖による支配は社員の意欲と思考力を奪います。

オハイオ州立大学のベン・テッパー博士の研究では、継続的に敵対的な言動を受けている社員は、仕事の満足度と組織へのコミットメントが低下することが分かっています。そして、心理的苦痛が強まり離職意向も高くなることが示されています。

怒鳴る、侮辱する、人格を否定する、見せしめにする、こうした行為は、一時的に人を従わせることはできます。しかし、社員は自発的に考えなくなります。失敗を隠し、悪い情報を上げず、上司の顔色を伺うようになります。

経営において本当に怖いのは、現場が沈黙することです。現場の違和感、顧客の不満、不正の兆候、事業のほころびが、トップに届かなくなるからです。恐怖で組織を動かす人は、組織を統制しているように見えて、実際には組織を壊しているのです。

権力はその人間の本性を増幅させる

経営者が自分自身に問うべきなのは、「自分に経営者としての力があるか」だけではありません。

「その力を持ったことで、自分の何が増幅されているか」です。

権限、資金、人事権、称賛、情報の非対称性は、人を突然別人にするのではなく、もともと持っていた傾向を大きくします。

学ぶ姿勢がある人は、より多くの声を経営に取り入れます。誠実さを大切にする人は、より重い責任を引き受けようとします。

一方で、自己正当化の癖がある人は、反対意見を遠ざけます。他者への敬意を失いやすい人は、組織を自分の思い通りに動かす道具として扱ってしまいます。

経営者に必要なのは、自分を強く見せることではなく、自分の中で何が強くなりすぎているのかに気づくことです。

偶然の成果を自分の実力と思い込んでいないか?
都合の悪い数字を直視できているか?
部下の沈黙を納得と勘違いしていないか?

経営者自身がこうした問いを持ち続けられる限り、権力は組織を壊す力ではなく、人と事業を前に進める力になります。

参考文献
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  • Malmendier, U., & Tate, G. (2005).CEO Overconfidence and Corporate Investment.
  • O’Boyle, E. H., Forsyth, D. R., Banks, G. C., & McDaniel, M. A. (2012)A Meta-Analysis of the Dark Triad and Work Behavior: A Social Exchange Perspective.
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  • Tepper, B. J. (2000)Consequences of Abusive Supervision.