「コンサルは意味ない」とか「役に立たない」と言われることが多いです。
高い報酬を払ったのに、分厚い資料だけが残り、現場は何も変わらなかった。そんな経験をした会社があるのは事実でしょう。
しかし、本当に意味がないとしたら、今日までコンサルティング業界というものが残っているのでしょうか?
世界最古のコンサルティングファームといわれる、アーサー・ディ・リトル(Arthur D. Little)が設立されたのは、1886年です。
それから140年も拡大し続けている業界です。意味がないのに市場規模5,000億ドル(約80兆円)まで発展しているとしたら、とんでもない詐欺師だらけの業界です。
確かに詐欺で捕まる人の肩書は「経営コンサルタント」のことが多いですが…
実際のところ、コンサルティング会社に依頼すると意味があるのでしょうか?それともないのでしょうか?
実証実験と調査をもとに以下のコンサルの効果について解説していきたいと思います。
- 工場の管理手法導入コンサルティング
- 戦略・経営コンサルティング
- 中小企業向けコンサルティング
また、コンサルの恩恵を受けやすい企業の特徴についても解説します。
管理手法のコンサルティングの実証実験
コンサルの効果について検証したスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授らの実証実験があります。
この実験では、繊維企業に対し、国際的なコンサルティングファームの支援を提供しました。
まず、コンサルタントたちは最初の1ヵ月をかけて20の工場を診断しました。
それから20工場のうち、ランダムに14工場に対し、4ヵ月かけて管理手法(工場運営、人事管理、販売・受注管理等)の導入コンサルティングを行いました。
その結果、コンサルティングを受けた工場では、品質欠陥が43%減少し、在庫も約21.7%減少しました。
観察された業績改善を金銭換算すると、3,000万ドル程度の利益増に相当すると推計されます。
最初の診断だけを受けた工場でも、何も受けていない工場と比べると多少の改善効果は見られましたが、導入コンサルティングまで受けた工場ほどの改善とはなりませんでした。
コンサルの効果は持続するのか?
この実証実験は2008年から始まったものですが、研究者たちはそれから約10年後の2017年に、工場を再訪しデータを確認しています。
その結果、導入された管理手法の約半分は失われてしまってはいたものの、コンサルを受けた工場とそうでない工場では、依然として生産性に大きな差があることが分かりました。
また、同じ社内でコンサルを受けた工場があると、その仕組みが他の工場にも波及する効果も見られました。
つまり、コンサルの効果は一時的なものではなく、持続するということです。
戦略・経営コンサルティングの効果
工場の管理手法のように、具体的な施策が打ちやすいコンサルティングなら効果が出るのは当たり前と思うかもしれません。
そこで次に、戦略・経営コンサルティングの効果を検証した、ベルギー国立銀行の研究を紹介します。
この研究では、戦略・経営の助言を行う大手10社のコンサルティングファームを使っている企業のパフォーマンスを調べています。
守秘義務があるのに、なぜコンサルティングファームを使っているのかが分かるかというと、公開されている付加価値税の支払先を見ているからです。
これらのデータを分析したところ、付加価値ベースの労働生産性は、導入後5年間で平均約3.6%上昇しており、平均賃金も2.7%上昇していることが分かりました。
さらに、労働分配率は低下していないことも分かっています。つまり人件費を削減して生産性を高めたわけではないということです。
このように戦略系のコンサルも効果を発揮していることが分かります。
中小企業がコンサルを入れても効果はあるのか?
零細企業や中小企業がコンサルを入れた場合はどうでしょうか?
これに関しては世界銀行グループのエコノミストであるミリアム・ブルーンらが調べています。
こちらの分析では、約432社のうち150社をランダムに選び、格安でコンサルを受けられる機会を提供しました。そのうち80社がコンサルを利用しています。
コンサルの内容は各企業の現状に合わせ、主に以下の項目となっています。
- ミッション・ビジョンの定義
- 会計・財務
- データ管理
- 組織構造と責任分担の明確化
- 販売戦略・広告
- 品質管理
- 資金調達
- 人事管理
コンサルの結果、どうなったかというと、全体の生産性とROA(総資産利益率)が改善しました。
また、コンサル提供から5年の間に、雇用者数は約57%、賃金総額が約72%増加していました。これはコンサルが一時的な効果ではなく、経営能力の持続的な改善につながった可能性を示唆するデータといえます。
コンサルの効果が出やすい中小企業の特徴
もちろん、すべての企業にコンサルが役立つわけではありません。その企業の特徴によって、成果は異なります。
サンディエゴ州立大学のジョン・フランシス博士らが、どんな企業がコンサルの恩恵を受けやすいのか調査しています。
この調査では事業拡大や業務効率化、マーケティング戦略のコンサルを受けた企業99社のデータを分析しています。
それによると以下の特徴を持つ企業は、コンサルを受けたとき成果につながりやすいことが分かっています。
- 受容:コンサルタントとの信頼・相互作用を通じて、助言を価値あるものとして取り込める。
- 理解:提案内容を既存の業務、知識、課題と結びつけて整理できる。
- 変換:新しい知識をそのまま受け入れるだけでなく、自社に合う形へ変換できる。
- 実行:誰が何を実行するのかを決め、提案を実際の業務改善や戦略実行に落とし込める。
外部から得た知識を取り込み、理解し、自社に合わせて変換し、成果につながる形で活用する能力がある中小企業は、コンサルを意味あるものにできるのです。
こうした能力を組織の「吸収能力(Absorptive Capacity)」といいます。
コンサルを依頼する前に自社にこの能力があるかどうか確認しておくと良いかもしれません。
とはいえ、顧客の「吸収能力」まで高めるのが優秀なコンサルタントですけれどね。
- N Bloom , B Eifert, et al. (2012).Does Management Matter? Evidence from India.
- G Bijnens, S Jager B Schoefer. (2025).What Does Consulting Do?
- M Bruhn, D Karlan, A Schoar. (2018).The Impact of Consulting Services on Small and Medium Enterprises: Evidence from a Randomized Trial in Mexico.
- John F, D Chakravarty. (2025).Business Consulting and SME Performance: Unraveling the Role of Absorptive Capacity.

