何年も前から、女性活躍の推進が叫ばれています。
クライアントの経営者から、女性役員や管理職を増やしたいという声を聞く機会も増えました。
しかし、当の女性がその気になってくれないと、ボヤく経営者も多いです。これは、ある意味で当然です。
「女性活躍を推進しよう」という声に対し、当の女性たちは乗り気でないどころか、うんざりしているのです。
こういった状況を打破しようと、研修や外部のコンサルタントを依頼することもあるかもしれません。
しかし、こういった施策によって女性活躍が推進される可能性は低いです。それどころか、逆効果となることが研究で判明しています。
制度を整えるだけの会社に女性はうんざりする
お茶汲みや掃除を女性だけにさせていた会社が、男性にもやらせるようにして、男女平等だと言い出すことがあります。
ここまで酷いケースは珍しいですが、人事制度を変えただけで、女性でも活躍できる体制を整えた気になる経営者は少なくありません。
しかし、それだけでは女性の活躍は推進できません。それどころか「世の中のトレンドに合わせて形だけ整えた」と感じて、うんざりします。
女性に活躍してほしいと思っているなら、社内の空気を変えなければなりません。
女性活躍が進まない根本的な理由
女性活躍が進まない理由は、出産や育児、家庭との両立の面で、男性と比べて不利になりやすいこと等が挙げられます。
さらにその背景には、社会の空気や、社内に残る無意識のジェンダーバイアスがあり、女性のキャリア形成を妨げる根本的な要因となっています。
少し前に、「管理職になりたくない女性は9割。その理由と目指してもらうための施策」という記事でも説明しましたが、役員や管理職になりたいという女性は少ないです。
興味があっても、出世競争をして誰かと敵対するくらいなら、今のままで良いと考えてしまう女性もいます。
また、女性は社内競争でモチベーションが上がるタイプも少ないです。
行動経済学者のウリ・グニージー博士らの研究でも、男性は競うことでパフォーマンスが高まりますが、女性はそうならないことが分かっています。
【理由1】社会の圧力が女性のやる気を削いでいる
なぜ、女性は競争したがらないのでしょうか?
生まれ持った脳が、そうなっているのでしょうか?
実は、女性も女性だけの環境では、競争でパフォーマンスが高まることがあります。
これが何を意味するかというと、社会の圧力が女性のやる気を削いでいるということです。
いまだに「女性が男性と同じ土俵で戦うなんて」という、無意識に共有された空気があるのです。
男女ともにこうした、ジェンダーバイアスを持ってしまっているため、女性活躍が進まないのです。
【理由2】負け組男性からの僻みを心配する
また、女性は男性と競争して勝ったとき、喜びだけではなく、「負けた男性から嫌がらせされないだろうか」という不安も感じます。
大勢の前で褒められると「嫉妬されるのではないか」と心配になる女性もいます。
女性YouTuberがフェラーリに乗っているだけで批判されるのを見ると、特に日本はこのような傾向が強いのではないでしょうか?
言葉は悪いですが、負け組男性の声さえ大きく響き、女性はそれを気にするのです。
つまり、女性は、頑張って結果を出したときでさえ、不安を感じ、さらに上を目指すことへのモチベーションが下がってしまうことがあるのです。
こうした要因も、女性活躍が進まない理由といえます。
時代遅れのダイバーシティ施策も女性活躍が進まない原因
女性活躍が進まない本当の理由が、無意識のバイアスにあるということは、すでに多くの企業が気づいています。
そこで、様々な研修を取り入れたり、評価制度の見直しを進めたりしています。
しかし、こうした取り組みが逆効果となり、余計に差別を増やしているのです。
研修と評価制度の設計は無意味どころか逆効果
ハーバード大学のフランク・ドビン教授らが、女性活躍を含むダイバーシティ施策の効果(=女性やマイノリティの管理職が増えるか)を調べた研究があります。
約800社の30年以上のデータと、経営幹部や管理職へのインタビューに基づくものです。
この研究によると、多くの企業で行われている下記の施策は、意味がないどころか、逆効果となることが分かりました。
- ダイバーシティ研修
- 標準化されたテスト
- 業績評価制度
- 苦情処理制度
- 法的リスクを強調する
(※ここでいう逆効果とは、女性管理職やマイノリティの管理職比率が減ったということです。差別する側の態度がどうなったかではありません。例えば、法的リスクを強調することで、加害者の行動が増えるということではありませんので、注意してください。)
時代遅れの施策が無意味な理由
なぜ、これらの施策で、女性活躍を推進することができないのでしょうか?
まず、ダイバーシティ研修ですが、これらへの参加を強制された男性社員は、反発心を抱くことがあります。それにより防衛的になると、偏見を抑えるどころか、逆に性差を意識させてしまうことがあるのです。
法的リスクの強調も同様です。「差別すると罰せられる」というメッセージは、行動変容よりも抵抗感を生みやすいのです。
また、標準化されたテストや、業績評価制度を整えても、その運用が恣意的になされたり、主観が入り込む余地があるため、効果が得にくいです。それどころか「制度が整っているのに文句を言うのはおかしい」という圧力を生み出すことさえあります。
苦情処理制度も、申し立てた従業員が報復を受けることを恐れ、使用しないことがあります。そのような状況にも関わらず、管理職が「制度があるから大丈夫」と誤認し、逆に気を遣わなくなることもあります。
女性活躍を推進するために有効な施策
この研究からは、女性活躍の推進に効果的な施策も分かっています。具体的には次のようなものです。
1. メンター制度
管理職や先輩がメンター(助言者)として、相談役になると、本人のモチベーションが上がったり、悩みが解消されます。
実はそれだけでなく、メンター側も近くで部下や後輩の努力を見る機会が増え、「昇進に値する人物だ」という認識が生まれ、昇進・育成の判断にも良い影響が出ることが分かっています。
2. クロストレーニング・部門横断
複数の部署・職務を経験し、普段接点の少ない人たちと働く機会を持つことで、多様な人材の仕事ぶりを直接知る機会が増え、登用の幅が広がります。
たとえば、自部門に必要な人材が、他部門から見つけられるといった機会が増えたりします。
3. ダイバーシティ・タスクフォース
ダイバーシティ・タスクフォースとは、組織内の多様性に関する課題を、データを見ながら継続的に検討し、各部門で改善を進めるための横断チームです。
数字を見ながら改善策を考えるため、タスクフォースに参加した管理職に「説明できる判断をしよう」という意識が働きます。
4. 任意参加のダイバーシティ研修
ダイバーシティ研修は強制されると反発を生むので逆効果と説明しましたが、任意参加にした場合はきちんと効果がでます。
なぜなら、人間には、「行動と気持ちを一致させておきたい」という心理があるからです。「自分から参加したのだから、自分は多様性を大事にする側の人間だ」と、思いやすくなるのです。
女性に活躍してほしいのか?良い会社と思われたいだけのか?
組織は放っておくと、片方の性別にとって有利な環境が出来てしまいます。すると、不利な方のパフォーマンスは落ちます。
無意識のバイアスは、組織全体に悪影響を及ぼすのです。
本当に女性活躍を推進したいなら、経営者であるあなたの意識を根本的に変えなければなりません。
女性に活躍してほしいのか?女性を登用している良い会社と思われたいだけなのか?
もう一度よく考えてみましょう。
余談ですが、女性は洋服を選ぶときに同性から嫌悪感を持たれないだろうか?と気にしながら選ぶことがあります。同性からの目を気にするのです。
やる気のある女性を昇進させたとき、他の女性からの嫉妬や嫌がらせが発生しないよう、同性である女性たちが発する空気を変えさせることも大切です。
- U. Gneezy, M. niederle, A. rustichini. (2003).Performance in Competitive Environments: Gender Differences.
- F. Dobbin and A. Kalev. (2016).Why Diversity Programs Fail: And What Works Better.

