採用してはいけない人を見抜く「魔法の質問」と心理学に基づく表情分析

日本は労働者保護の強い国です。会社に迷惑をかけ続ける社員であっても、簡単に解雇することができません。

後述しますが、人口の1~3%は存在している「ダークトライアド」と呼ばれる、生まれつき邪悪な性格を持っている人間を採用してしまったら、目も当てられません。

つまり、社員を雇うというのは成長のチャンスであると同時に、崩壊のリスクでもあるのです。

ですから採用面接でしっかりと、選別する必要があります。とはいえ、数十分で候補者の本性を見抜くのは難しいものです。

そこで今回は、心理学研究に基づいた、採用してはいけない人を見抜くための「魔法の質問」を紹介します。

また、顔の表情から危険人物を見極める簡単な方法についても解説します。

採用してはいけない人を見抜く一般的な質問

まずは、採用すると問題を起こしがちな人材を見抜くための、一般的な質問を確認しておきましょう。

1.前職で不満に感じていたことはありますか?

これは人事や採用関係の書籍でよく書かれているものなので、知っている人も多いかもしれません。他責思考を見抜くための質問です。

不満を持つこと自体は問題ではありません。不満を他責だけで終わらせるか、自分にできる改善行動を取ったかが重要です。

危険人物は、会社の体制や上司、顧客への批判が多い一方で、自分が取った改善のための行動がほとんど出てきません。

逆に、健全な候補者は、不満を冷静に説明しつつ、自分なりに相談や提案、調整した内容を話せます。

2. 自分のミスによって、同僚や顧客に迷惑をかけたときどう対応しましたか?

この質問では、候補者の反省する姿勢、学習姿勢を確認できます。

危険人物は、ミスの説明が長く言い訳がましく、対応の説明が短い傾向があります。

一方で信頼できる候補者は、何が自分の責任だったのか、誰にどんな影響が出たのか、次に同じことを起こさないために何を変えたのかを具体的に話せます。

採用してはいけない人を見抜く「魔法の質問」

ここまで挙げてきた、採用してはいけない人の見抜き方で、ダメと判断できる人材であっても、教育によって変えられる可能性はあります。

人間の脳には可塑性がありますから、自分の子供を育てるくらいの根気は必要ですが、思考のクセや性格は変えられるのです。

しかし、中にはほぼ100%変えられない人材というのが、人口の1~3%ほどいます。それが以下のダークトライアド(3つの邪悪な性格傾向)と呼ばれる、生まれつきの特性です。

  • サイコパス
    共感や罪悪感が乏しい。常に自分が正しいと考える。衝動的・冷酷に行動しやすい。
  • マキャベリスト
    目的のためなら他人を操作・利用してもよいと考える。冷淡で計算高い。地位欲求が強い。
  • ナルシスト
    自分は特別で優れていると感じている。称賛や注目を強く求める。

これらは、生まれつきの脳の特性であり、変化させることはほぼ不可能とされています。

もしこれらのタイプを雇ってしまったら、組織が混乱したり、顧客にも多大な迷惑を掛けることになります。悪いことをしても、その実感がなかったり、それに快感を覚えてしまっているからです。

面接で見抜くには次のような質問が効果的です。

サイコパスを見抜く質問

1. 周囲に理解されなかったけれど、結局は自分が正しかったという経験を教えてください

サイコパスは悪い行動をしても、それを「正しいこと」「周囲が理解していないだけ」と考えます。そのため、この質問に対する答えの内容自体がおかしいことがあります。

まともな内容だったとしても、この手の質問への返答中に「目的と行動」という構成が多く出るようならサイコパシー傾向が高いです。

スタンフォード大学のジェフリー・ハンコック教授らが、刑務所にいるサイコパスを直接分析したところ、サイコパスは自分の犯罪行為を、目標達成のための論理的な結果として語りやすいことが分かっています。

「お金が必要だったから、その家に侵入した」といったような構成で語るのです。仕事に関することなら「納期が迫っていたから、最終確認はしなかった」といった具合です。

「なぜなら」「である以上」「するために」「となるよう」といった接続詞も多くなります。

また、自分だけが正しかったというエピソードを嬉々と答える人もサイコパシー傾向が高いです。彼らからすると「よくぞ聞いてくれました」という答えたくて仕方のない質問なのです。

サイコパスを見抜く魔法の質問を1つだけ挙げろといわれたら、私はこれをオススメします。

2. 自分の行動で誰かが傷ついたと分かったら、どうしますか?

焦点が「相手の痛み」に向くか、「自分の損得」に向くかを確認する質問です。共感性や罪悪感をどれくらい持っているかわかります。

たとえば「謝罪して、悪意のなかったことを伝えます」と答えたら危険信号です。

悪意のなかったことを伝えたいというのは、焦点が相手の被害ではなく、自分の正当化・評判・損失回避に集中している心理の表れだからです。

相手が使う言葉に惑わされず、どこに焦点が向いているかを基準に判断してください。

3. 急いで判断したことで後から修正が必要になった経験を教えてください

衝動性を見抜くための質問です。

この質問のポイントはこちらから発する「急いで判断」というフレーズが、相手の脳の衝動性のスイッチをオンにすることです。

衝動性の高い人はこの質問に対し、即座に「特にないです」と答えます。衝動的に反応してしまうからです。

即答しなくとも、失敗経験がないと言い切るようなら危険です。実際に失敗がないというより、自分の判断を振り返る習慣がないということだからです。

また、「スピード」と「確認不足」を混同している場合、納期・顧客対応・社内調整で同じ問題を繰り返しやすいです。

マキャベリストを見抜く質問

1. 会議で提案するとき、伝えると反対されるかもしれないけれど、伝える義務のない情報を伝えますか?

非倫理的な操作性を見るための質問です。伝えるか、伝えないかは問題ではありません。

しかし、「相手の判断を混乱させないためにも、伝えません」といった答えが返ってきたら危険です。

相手にとって不利益となる判断をするとき「相手のため」という言葉を使うのは、操作性の高いマキャベリストの典型的な特徴です。

相手を操作するときの枕詞のようなものなので、無意識に出てしまうのです。

余談ですが、このタイプの親、つまり「あなたのためだから」が口癖の親に育てられた人は、成人後もマキャベリストの餌食になりやすいので注意してください。コントロールしやすい雰囲気がにじみ出てしまっているのです。

2. 人を育てるとき、どのような状態になれば育ったと感じますか?

人材育成のゴールを、部下の自律と捉えているか、自分の意図通りに動くようになることと捉えているかを見抜く質問です。他者に対する支配欲求が分かります。

この質問に対し「こちらが言わなくても、こちらの意図を読んで動ける状態です」といったニュアンスの答えを返して来る人は、他者を支配したいという欲求が強いです。

これは、自分に従うことが正しいこと、という認識を持っていると、つい出てしまうフレーズなのです。

逆に、部下の創造性が発揮されることを歓迎するタイプは、マキャベリスト傾向が低いといえます。

3. 後輩が先に出世しました、何を確認しますか?

地位欲求の高さを見抜く質問です。

「なぜその人が出世したのかを確認します」という回答なら、かなり地位欲求が強いです。

これは、客観的な評価で負けた場合でさえ、相手の昇進の妥当性を査定する側(上の立場)に回ろうとする心理の表れです。

このタイプは嫉妬心や序列意識が強く、自己評価が異常なほど高い傾向にあります。

自分に足りないものや、相手の強みを確認するという、学ぶ姿勢が見える回答であれば健全といえます。

ナルシシストを見抜く質問

1. あなたの手掛けた仕事は凄いですよね

ナルシストは、他者からの賞賛に依存しています。常に褒められたいと思っています。

面接中も、最初こそは控えようと思っていても、何度か褒められているうちに、快感が強くなり始め、さらにそれを求めて、いかに自分がすごいかを気持ちよさそうに話し出してしまいます。

要するにナルシストを見抜く簡単な方法は、おだてて気持ち良くするということです。

2. あなたの強みが、逆にチームの妨げになったことはありますか?

誇大性の強さを見るための質問です。

ナルシストは「自分が専門的すぎて、周りの理解が追い付かなかった」というニュアンスの回答をします。

ナルシストは自分がズレているだけの状況でも、それを周囲のレベルが低いからと思い込んでいます。

そのため、うまくいかない理由の説明をするときに、相手を下げる構成で話すのです。

3. あなたのナルシスト度を7段階で教えてください

インディアナ大学などのチームによる研究では、ナルシストほどこの質問に高い数字(5~7)を答える傾向があることも分かっています。

なぜなら彼らはナルシストであることを悪いことだとは思っておらず、むしろ誇ることとさえ思っているからです。

もちろん全ての人が該当するわけではありませんが、面接で「自分は凄い」ということをペラペラと喋るタイプには有効です。

相手の顔の表情から見抜くテクニック

最後にオマケで言葉による質問ではなく、相手の表情から採用してはいけない人材を見抜く方法を説明します。

まず、面接官側が過去の悲しい話や、痛い思いをした話をしてください。

これに対し、相手の表情もそっちの方向へ変わっていけば問題ありません。

つまり、タンスの角に足をぶつけた話をしたとき、相手も痛そうな表情をつくるかということです。

ここまで説明した、サイコパス、マキャベリスト、ナルシストに共通する特徴は、共感性の低さです。共感性はこうした表情に出ます。

フンボルト大学のハンナ・ドリマラー博士らの実験によると、共感性と顔面模倣には相関がることが分かっています。

つまり、共感性の高い人ほど相手の話に顔の表情が釣られやすく、共感性の低い人は釣られにくいということです。

こうしたシチュエーションに限らず、表情のズレを感じた場合は、情動的な共感能力に何らかの問題を抱えている人の可能性が高いです。

もちろん面接で緊張している可能性も考慮する必要はありますが、人間の直感的な違和感というのは意外と当たります。

直感というのは、人類が原始的な生活を営んでいたときから、生存のために発展した、センサーのようなものだからです。

くれぐれも危険な人物を採用してしまわないよう、面接中は、危機センサーを働かせ続けてください。

参考文献
  • JT Hancock, MT Woodworth, S Porter. (2011).Hungry like the wolf: A word-pattern analysis of the language of psychopaths.
  • S Konrath, BP Meier, BJ Bushman. (2014).Development and Validation of the Single Item Narcissism Scale (SINS).
  • H Drimalla, N Landwehr, et al. (2018).From face to face: the contribution of facial mimicry to cognitive and emotional empathy.