他の先進国と比べても、日本は客の立場が強い国です。
数百円の商品を提供しているファミレスや、ディスカウントストアでさえ、店員はへりくだっています。
「お客様は神様です」などと、宣言してしまっている企業まであります。
しかし、あなたが自分の経営する会社の利益を増やしたいのであれば、客を選ばなければなりません。
「お客様は神様です」は間違い
客を尊大にしてしまう原因の一つとして、「お客様は神様です」という言葉が世間に浸透してしまったことが挙げられます。
これを、客商売における心構えだと思っている人もいますが、実は間違いです。
知っている人も多いと思いますが「お客様は神様です」という言葉は、歌手の三波春夫さんによって広まりました。
三波さんが、「神様に祈りを捧げるような心構えで歌っている」という話をしたら、それが「お客様は神様です」として広まってしまい、いつの間にか小売店や飲食店でも使われるようになったのです。
つまり「お客様は神様です」という言葉を、客が偉いのだという意味で使うのは、間違っているということです。三波春夫さんの公式サイトにも、その旨が説明されています。
お客様は神様ではありません。儲けたいなら客を選ばなければなりません。
客を選ばないことこそ傲慢
客を選ぶだなんてとんでもない、という経営者もいるでしょう。
特に中小企業の経営者は誠実な人が多いので、全ての客に対して誠心誠意の対応をしてしまいます。
しかし、客を選ぶほうが誠実です。
客を選ぶとは、相手の態度だけを見て選別しろ、ということではありません。その前段階で、狙うべき客層を絞ることも含みます。
少し前に「子連れでラーメン屋に行ったらお断りされた」とクレームを言っていた客が話題になりましたが、このラーメン屋は誠実な対応をしたと思います。
このラーメン屋がターゲットとしているのは、回転率を上げられる客です。さっさと食べて、さっさと帰る客なのです。
仮にこのラーメン屋が、ゆっくり食べる可能性が高い客にまで誠実に対応していたら、どうなるでしょうか?
回転率が落ちます。すると、利益を出すために値上げせざるを得なくなります。その値上げ分は、いつも来てくれている客に転嫁することになるのです。
ヒトやモノといった、企業の資源は限られています。それにも関わらず、どんな客にも最高のサービスを提供できるなどという考え方こそ傲慢なのです。
全員に中途半端なサービスを提供するよりも、選別した客に最高のサービスを提供することが、誠実な企業経営のあり方です。
優良顧客とクレーマーに同じ対応をするのは背信行為
どの業界でも理不尽なクレームをつけてきたり、要求の多い顧客ほど金払いが悪い、という共通点があります。
このような顧客と商売をしても、時間と手間ばかり掛かって利益になりません。この手の顧客を1社相手にする労力で、優良な顧客を何社も相手にできます。
つまり、客を選ばないということは、大きな機会損失を発生させるということです。
また、文句も言わずに金を払ってくれる優良顧客と、理不尽なクレーマーに同じレベルの対応をするのは、優良顧客に対する背信行為ともいえます。
それから、理不尽な客にも誠実な対応をさせられた社員は精神的疲労が蓄積し、パフォーマンスが落ちます。最悪の場合には、仕事が嫌いになって辞められてしまうこともあるでしょう。
「理不尽な客が将来的にもたらす利益」と「社員を採用して育てるコスト」を比べたら、後者のほうが高くつくのですから、こういった客にまで誠実な対応をするのは経営判断としてNGです。
店側にも客を選ぶ権利はある
小売店や飲食店を経営している人間の中には「店側に客を選ぶ権利なんてあるの?法律違反になるのでは」と心配になる人もいるでしょう。
しかし、店と客というのは単に売買契約を結ぶ当事者同士に過ぎません。ここで適用される民法には「契約自由の原則」というものがあります。
つまり、誰と契約するかは当人の自由ということです。客がどの店で買うか自由に選べるのと同様に、店も誰に売るかを自由に決めることができるのです。ですから出禁も合法です。
水道やガスといったインフラに関係する業種は、個々の特別法によって客を選ぶことが禁止されていることもありますが、通常の小売店や飲食店では客を選ぶことは禁止されていないのです。
客を選ぶ権利は当然ありますし、売買契約において「買主のほうが立場が上である」などという定めも存在しません。店も客も同じ立場です。
個人的な意見を言わせてもらえば、日本の店の多くは低価格でも素晴らしいサービスを提供してくれているのですから、飲食店やディスカウントストアでは、むしろ客のほうが立場が下ではないかとさえ思います。
私は常にそういう意識を持って買物をしています。
「サイゼリヤ様いつもありがとうございます」と思って食事をしていますし、ドラッグストアで(粗利率より販管費率のほうが高いことが多い)食品だけを買うときは申し訳ない気にさえなります。
客を選ぶから客から選ばれる
当然ですが、私も顧客を選んでいます。
私は経営支援や事業再生、集客支援などを行っていますが「誠実な仕事人の利益を増やす」ということを大切にしています。
ですから、この使命に合わない相手からの依頼は全て断っています。
価値のないものを売ったり、遵法意識の低い会社は「誠実」とは言えないため、断っているのです。ウェブサイトでもお断りする業界の一例を記載しています。
中には簡単に利益を増やして、高額な報酬が貰えそうな案件もあります。そういった案件を断ると損のように思われるかもしれません。
しかし、そのような仕事を受けてしまえば自分を恥じることになりますし、信用を失うことにもなりますから、長期的に見れば大損なのです。
何度も言いますが、お客様は神様ではありません。
「客を選ぶから客から選ばれる」ということを経営者は忘れないでください。

