社長をしていると、「もう仕事をやめたい」と思うこともあるでしょう。
会社のために頑張っているのに、売上の不安は消えない。社員は動かない。資金繰りや取引先への対応も終わらない。休んでいるつもりでも、頭のどこかではずっと会社のことを考えている。
このような状態が続くと、責任感の強い人ほど、心が限界に近づいていきます。そして、一般的な休息や気分転換だけでは、なかなか回復できないことがあります。
この記事では、社長が「仕事をやめたい」と感じるほど疲れてしまう理由と、そこから回復するための対処法を紹介します。
社長の心が回復しにくい理由
言われるまでもないことかもしれませんが、社長は他の従業員と比べて、精神的負担からの回復が難しいものです。
モンペリエ大学のチームが、1,000人以上の社長と、3,000人以上の従業員のメンタルを比較した研究があります。
それによると、経営者は休息や、趣味、リラックス法を取り入れた場合でも、従業員と比べて回復しにくいことが分かっています。
その理由は、仕事が「会社の業務」ではなく「自分自身の問題」になりやすいことにあります。
会社員なら、勤務時間が終われば心も体も仕事から離れることが可能です。
しかし、社長は売上、資金繰り、社員、取引先、将来の不安まで背負っています。そのため、仕事が終わっても、心のどこかで会社のことを考えてしまうのです。
また、社長にとって会社はただの職場ではなく、自分自身の人生・使命・アイデンティティと結びついていることが多いです。
「休む」「忘れる」と決めても、頭の中での切り離しができないのです。
このように社長にとって会社の問題は、自分自身の問題になりやすいのです。
そしてそれが蓄積され、バーンアウトやモチベーションの低下という、マイナス方向に振れてしまうことがあるのです。
最も重要なのは「コントロール感」だった
さきほどの研究では、精神的なプレッシャーや、モチベーションの低下に効果的なものが何かも調べています。
それによると、仕事のことを忘れたり、趣味に没頭すること以上に、仕事の時間外での「コントロール感」を持つことが、バーンアウト(燃え尽き)の減少と、幸福感の上昇に重要なことが分かっています。
コントロール感とは、「何をするか」「どう過ごすか」「誰と過ごすか」を、自分で決められているという感覚のことです。
コントロール感が効果的なのは、「自分は状況に振り回されているだけではない」と感じられることで、心の消耗が弱まるからです。
バーンアウトやモチベーションの低下は、強い負荷を受け続け「もう自分ではどうにもできない」という感覚が積み重なることで起こりやすくなります。
社長は責任が大きく、顧客、従業員、資金繰り、取引先などに常に対応し続けるため、自分の時間まで他人や仕事に支配されているように感じやすい立場です。
そこで、仕事後の時間に少しでも「自分で選べている」と感じられると、心が受け身の状態から戻ります。
これは、休んだから回復するというより、「自分の人生を自分で動かしている」という感覚が戻るため、精神的な圧迫感が減ることの効果です。
また、コントロール感があると、休む時間そのものが義務や逃避ではなく、自分の意思で選んだ時間になります。
そのため、心が安心しやすく、緊張がほどけ、疲労やモチベーションの低下から立ち直りやすくなるのです。
コントロール感を手に入れて回復する具体的な方法
社長がコントロール感を取り戻し、再びモチベーションを高めるにはどうすれば良いのでしょうか?
具体的な方法として、次のような施策が挙げられます。
夜の最初の30分を「自分の時間」として予約する
帰宅後すぐにメール、LINE、資料確認に入るのではなく、「この30分は風呂に入る」「散歩する」「何もしない」と先に決めます。内容の立派さよりも、自分で選んだ予定として扱うことが大切です。
仕事を考える時間に終わりを作る
「今日は20時以降は判断しない」「資金繰りは明日の朝9時に見る」と決めるだけでも、頭の中の仕事をいったん閉じやすくなります。仕事を完全に忘れようとするより、考える時間を自分で区切るほうが現実的です。
連絡に反応するルールを決める
「夜は緊急案件だけ見る」「返信は翌朝にまとめる」「日曜午前は通知を切る」と決めます。いつでも即対応していると、自分の時間が他人に支配されている感覚が強くなります。
回復時間を予定表に入れる
会議や商談だけでなく、休憩、散歩、昼寝、家族との時間も予定として入れます。「空いたら休む」では、社長はほとんど休めません。15分でも予定化すると、自分で時間を動かしている感覚が戻ります。
「今日はやらないこと」を一つ決める
朝の時点で、「今日は夜に見積書を作らない」「今日は新しい案件を考えない」と決めます。やることを増やすより、やらないことを決めるほうが、コントロール感は戻りやすいです。
趣味や勉強は逆効果となることがある
あくまでも今回の研究結果のみのことですが、趣味や勉強は幸福感の上昇にはつながるものの、回復にはそれほど有効でないことが分かっています。
社長をやるような人というのは、趣味や勉強であっても本気になりやすいです。これ自体は悪いことではありません。
しかし、仕事ですでに学び、挑戦し続けているため、趣味でも同じ熱量でやってしまうと、かえって負担となることがあるのです。
ですから、多趣味なのに全くリフレッシュできないという社長は、そういった点を見直してみると良いかもしれません。
仕事に直結する学びばかりになっていたり、読書や運動を義務化してしまっていると、それがストレス源になってしまいます。
純粋に楽しいという感覚のものだけ残して、他の趣味を休むことも必要かもしれません。
- M L Moal, R Thurik, et al. (2025).Mental health of entrepreneurs and daily recovery experiences

