間接部門が多すぎる会社は成長しない。「むかつく」と思っている社員も多い

私のクライアントは中小企業が多いですから、社員数は数人から多くても数百人です。

しかし、そのような規模に不釣り合いなほど、間接部門に人が多すぎる会社があります。

人員が増えてしまった要因としては、異常なほど事務処理の効率が悪い設計になっているとか、人事戦略など考えずに本人の希望のままに配置してしまっているなどがあります。

「知り合いの〇〇さんの娘の働き口がないっていうから、事務みたいな綺麗な仕事が良いって言われて…」というパターンもありす。ふざけた話に聞こえるかもしれませんが、地方ではよくあるパターンです。

赤字になってるわけでもないのだから、間接部門の人員が多くても問題ないでしょう、というスタンスの経営者もいますが、大問題です。

間接部門が多すぎる会社は、業績が悪く、イノベーションも起こりにくくなることが3,000社以上の調査で分かっています。

それと、間接部門の人数に無頓着な経営者は、そこが全体に与える悪影響についても見落としがちです。

企業の業績を左右する、社員のモチベーションや心理的安全性は、社員同士のやり取りによって9割方決まります。

つまり、そのハブ(中枢)となりやすい間接部門の影響は非常に大きいのです。

間接部門の人間が、他部門の社員にどのような態度を取るかが、組織風土を決めるといっても過言ではありません。

何も対策をしていない会社は、基本的にマイナスの影響が出ていると思ってください。

なぜなら、間接部門は放っておくと偉そうになる性質を持っているからです。そして、この傾向は会社のレベルは低くなるほど強くなります。

間接部門の多さと企業業績の関係

カリフォルニア大学アーバイン校のチュチュ・リアン助教らが、間接部門の社員の多さと、企業業績の関係を分析しています。

この分析は、3,000社以上を対象に、2008年から2018年までのデータを取得して行われたものです。

それによると、間接部門の人員数と、企業業績には負の相関があることが分かりました。

間接部門の人数が多すぎる会社は、利益率やROA(総資産利益率)が悪くなる傾向にあったのです。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

主な理由は2つあります。

1. 利益をもたらす人材を雇えなくなる

1つ目の理由はシンプルです。

間接部門の人件費が増えると、営業や製造といった、直接的に利益をもたらす部門に人を雇うための予算がなくなります。

それにより、顧客を開拓したり、新製品を開発したりする機会が減ってしまうのです。

また、収益を生むことよりも、内部管理を重視する文化の組織になってしまい、利益を求める意識が希薄化してしまうことも要因です。

2. 無駄な仕事が増えイノベーションが起こらなくなる

2つ目の理由は、社内で余計な仕事が増えることです。

間接部門が増えると、社内手続きや書類のやり取りが増えます。それによって全体の効率が落ち、生産性が落ちてしまうのです。

さらに、こうした仕事が増えることでイノベーションが起こりにくくなることも分かりました。

新しい製品や技術、サービス、事業アイデアを生み出すには、既存のルールでは想定されていなかった手順が必要となることがあります。

しかし、社内手続の多い官僚化された、組織ではこうした手順が取りにくくなるため、イノベーションが起こらなくなるのです。

イノベーションが起こらないことで、未来の利益も減ってしまうのです。

間接部門にムカつく社員は多い

間接部門に対し、「プラスにもならないがマイナスにもならない」と思っている経営者は多いです。

しかし、見えにくいですが、大きなリスクを抱えていることを知っておいてください。

まず、よほど性格が良いか、本人が意識していない限り、間接部門というのは偉そうな態度を取りやすいものです。

本人にそのつもりがなくとも、他部門の社員からはそう思われていることが多いです。

実は私自身も会社員だった頃は、間接部門で過ごした時期のほうが長いです。そこでも偉そうな同僚はいました。

逆に、間接部門は鼻につくと思われやすいから気を付けよう、とアドバイスしてくれる人もいました。

なので私は気をつけていたのですが、それでも偉そうな態度と受け取られてしまったことはありました。

クライアント先でも、間接部門に対し「むかつく」「いらない」という声を聞く機会は多いです。

こうした状態を放置することで、社内に不協和音が生まれたり、モチベーションが下がることもありますから、きちんと対処しましょう。

なぜ間接部門は偉そうになってしまうのか?

そもそも、なぜ間接部門は偉そうになってしまうのでしょうか?

理由は2つあります。

1. 自分が評価する立場という錯覚に陥る

間接部門というのは法律や社内規定で決められていることと、社員のやっていることが合っているかを「確認」する仕事が多いです。

他の部門の社員も「これで合ってますかね?」などと聞いてきます。それが合っていないと修正するように言ったりします。

すると、「確認」ではなく「評価」をしているような気になり、偉くなったと錯覚するのです。

特に現金の授受が伴うとこの傾向は強まります。例えば、旅費精算の伝票の記載事項が合っているか確認するだけの立場なのに、経費で落とせるかどうかを決める権利が自分にあるかのように思い込んでしまったりするのです。

また、経営陣とのやり取りで、機密情報に触れる機会も多いですから、他の社員が知らない情報を知っているという優越感が、錯覚を強めてしまうこともあります。

2. 自分の実力を認識する機会が少ない

営業は数字で成果が出ますし、現場であれば製品の仕上がりが目の前に現れます。

しかし、間接部門の仕事は確認しにくいものです。

さらに財務部門であれば社外の公認会計士や税理士、総務部門であれば弁護士や社労士といったように、外部の専門家が難しい部分をやってくれたりします。

実際に、クライアントの社長から「決算書のことは〇〇さんに聞いて。経理のプロだから」と紹介された社員が、簿記2級程度の知識さえなかったといったことは頻繁に経験します。

社内でしか通用しない知識を、他社でも通用する汎用性のある知識と勘違いしてしまう、ことも偉そうになってしまう理由でしょう。

間接部門が多いことのプラス効果

先ほどの分析では、間接部門が多いことのプラス効果も分かっています。

それは、従業員満足度が高まったり、離職率が低下することです。

「間接部門は偉そうなのなだから、このような効果は出ないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、今回の分析の対象となったのはアメリカの企業です。

アメリカは職種別採用です。つまり、人事にいるのは、産業組織心理学や人材マネジメントに精通した専門人材です。

社員とどう接すれば、心理的安全性やモチベーションを高められるか知っており、自分自信のキャリアアップのためにも、それをどんどん実践するのです。

これに対し、日本企業にいるのは総合職として一括採用された社員ですから、専門性はありません。

もちろん、勉強する人もいますが、次回の配置換えで全く異なる部署に異動する可能性のある会社では、専門性を高めようとする動機は生まれにくいです。

そのため、日本企業でこうしたプラス効果を期待するのは難しいと思うもしれません。しかし、そんなことはありません。

間接部門をプラスの影響を与える存在に

あくまでも私の経験だけの話ですが、企業のレベルが下がるほど、間接部門に偉そうな人が多くなります。

これは「仕事ができない人ほど自己評価が高い理由」でも説明した通り、無能な人ほど自分を客観的に見るための「メタ認知」能力が低いことなどが要因です。

これに対し、レベルの高い企業は優秀な人が集まりやすいですから、自分を客観的に見る能力が高く、自分が偉いのではないと理解でき、謙虚になるのです。

それだけではなく、学ぶ意欲も高いため、偉そうにすることのマイナス効果を知っていることが多いことも要因です。

仮にあなたの会社の間接部門に優秀な人材がそろっていなくとも、諦める必要はありません。

学びの機会を用意することで、「偉そうでムカつく」と思われている間接部門を、社内全体にプラスの効果を与える存在に進化させることは可能です。

まずは経営者が、間接部門に対し、人員が多すぎると業績悪化につながる、放置しておくと自然と偉そうになっていくという認識を持つことから始めましょう。

参考文献
  • C Liang, B Lourie, et al. (2025).Too Much of a Good Thing? Administrative Support Staff and Firm Performance.