社員を大事にしない会社は潰れる。51,365件の社員レビューの分析

「社員を大事にしましょう」というのは綺麗ごとではありません。重要な経営施策です。

社員を大事にしない会社は、財務状況が悪化して、潰れることになります。

このことは、複数の研究からも判明していることです。

社員を大事にしない会社は財務レバレッジが高い(=潰れやすい)

会社が潰れるときというのは、たいてい借金が返せなくなったときです。

そしてこれは、潰れる前からBS(貸借対照表)を見れば、簡単に分かります。

財務レバレッジ(総資産に対する借金の比率)が高くなっているからです。

そのため、ちょっとした市場環境の変化や、取引先の喪失で利払いさえできなくなり、追加融資も受けられず、潰れるのです。

実は社員を大事にしない会社ほど、この状況に陥りやすいことが分かっています。

社員をどう扱うかと財務状況の関係

リーズ大学のチームが、会社が社員をどう扱っているかと、財務状況の相関を検証した調査があります。

この調査ではGlassdoorというサイトのデータを利用しています。このサイトは企業の従業員満足度評価やレビューが掲載されているサイトです。

そこで働いている社員が以下の項目を評価しています。

  • キャリア機会
  • 報酬・福利厚生
  • ワークライフバランス
  • 経営陣のリーダーシップ
  • 企業文化・価値観

51,365件の社員レビュー

このサイトから118社、51,365件の社員レビューを抽出し、財務データと突き合わせました。

その結果、社員からの評判の良い会社、つまり社員を大事している会社ほど、財務レバレッジが低い傾向にあることが分かりました。

逆に社員を大事にしていない評判の悪い会社は、財務レバレッジが高いということです。

つまり、借金に依存した経営をしているため、倒産リスクが高いのです。

信用格付も低いことが判明

また、信用格付にも相関があることが分かっています。

評判の良い会社は、S&Pの格付評価が高く、悪い会社は低かったのです。

格付や金融機関や市場からの資金調達のしやすさに影響します。

つまり、社員を大事にしない会社は、資金繰りでも不利になりやすいということです。

流れの向きは一方通行

社員からの評判が悪い会社ほど、財務レバレッジが高く、格付が低いという結果は、逆の流れでは成立しないことも分かっています。

分かりやすくいうと、財務が悪化した影響で、社員を大事にしなくなったわけではないということです。

社員を大事にしない会社の財務が悪化していく、という流れの向きなのです。

社員を大事にしない会社が潰れる理由

なぜ社員を大事にしない会社の財務状況は悪化し、潰れてしまうのでしょうか?

その原因は以下の通りです。

1. 採用・教育のコストが膨らむ

社員を大事にしない会社は、離職率が高いです。

そのため、常に新しい人を採用しなければなりません。採用には求人広告費、面接の時間、紹介会社への手数料などがかかります。さらに、入社後には教育や研修も必要です。

つまり、社員を大事にしないことで採用コストや教育コストが膨らんでしまうのです。

2. 自社は弱くなるのにライバルが強くなる

辞めていく社員が持っていた「現場の知恵」も失われます。

面倒な顧客への対応方法、トラブル時の判断、業務を円滑に進めるコツ、常連客との関係性などは、マニュアルだけでは簡単に引き継げません。

こうした知識が社外に流出すると、自社は弱くなるのに、ライバルは強くなるため、顧客を失うことになります。

3. 顧客体験が悪くなり売上が低下

大事にされない社員は疲弊し、ストレスが溜まります。

そして、それが仕事ぶりや顧客対応に出ます。すると顧客からの評判が落ち、売上も落ちます。

特にホテル、航空、飲食、旅行関連サービスのように、スタッフの対応がそのまま顧客体験につながる業種で、こうした影響が顕著なことも分かっています。

従業員満足度が高い企業は破産しても再生しやすい

今回の調査は、Glassdoorというサイトの従業員からの評価やクチコミを参考にしたものです。

これを「たかがネットのクチコミだろ?」とバカにしてはいけません。

求人サイトなどの社員レビューは、財務指標よりも企業の破産を予測する精度が高いことも分かっています。

コネチカット大学のジョン・ノップ准教授らが、先ほどのGlassdoorの中から、2008~2020年に破産申請をした327社の社員の評価を抽出して分析したところ、会社が潰れる予兆は、2~3年前からすでに、従業員満足度の低下というシグナルとして表れていることが分かったのです。

従業員は経営不全や組織劣化を早く感知するためです。

そして、さらに重要なことも分かっています。従業員満足度の高い企業は、破産後に再生できる可能性が高かったのです。

これは再建に必要な人材が残ってくれやすいことなどが要因です。

社員を大事にすることは、最も効率の良い投資

ここまでの説明で、社員を大事にすることの重要性がお分かりいただけたかと思います。

従業員満足度が下がると、顧客からの評価も下がります。

しかも、近年は顧客の不満がオンラインレビューやSNSで広がりやすいため、あっという間に集客が落ちます。

そして、求職者からも「働きたくない会社」と見られ、さらに人を採りにくくなります。

人が足りないため既存社員の負担が増え、サービス品質が落ち、顧客が離れていく。この悪循環に入ると、会社は簡単には立て直せません。

給料アップだけが、社員を大事にすることではありません。

まずは、経営者が態度を変えることです。

人間は感情の動物ですから、それだけでも変化が起こるのです。

社員を大事にすることは、無料でできる最も効率の良い投資なのです。

参考文献
  • P Stamolampros, E Symitsi. (2022).Employee Treatment, Financial Leverage, and Bankruptcy Risk: Evidence from High Contact Services.
  • JD. Knopf, K Lalova-Yuhasz. (2026).Predicting Bankruptcy: Ask the Employees.